関わりたくないと思うときほど、
関わってしまうわけで。
恋する事が罪ならば
「遠足で遊園地なんて不思議な学校達だよね。」
「ふふ・・・そうね。」
入学して始めての行事、遠足。
遊園地に行くという事で浮かれきった生徒達の最後尾に、はいた。
外道高校に通うアキラと共に歩く姿は、妙に不思議である。
他にも五輪、太陽学園など様々な学校が遠足にきていた。
「・・・出来れば五輪には会いたくないね。」
「この間はごめんね、私・・・何も知らなくて。」
「良いの、隠してた私が悪いんだから。」
申し訳なさそうにしているアキラがなんだかかわいらしくて。
はつい笑顔になってしまう。
昔からそうだ、アキラの一挙一動には弱い。
なんでも許してしまいそうになってしまう。
アキラに心から頼まれれば、なんでもしてしまいそうだ。
「さて、どこ回ろうかなー。」
遊園地の入り口を潜り、あたりを見渡しながら言う。
アトラクションが多すぎて、何からまわるべきか迷う。
はアキラにも尋ねようとしたが、今までアキラがいた所に彼女はいなかった。
「、なんだかあそこ様子が変・・・。」
アキラにそう言われ、もその方を向く。
確かに何か様子がおかしい、やけに仰々しい感じがする。
黒服にサングラスを着た体格の良い男達が立ち並び、
その中心には金髪をした小さな男の子がいた。
「もしかして、忍んで来日してるって言う某国の皇太子・・・?」
先日から色々なところで囁かれていた話である。
勿論、お忍びと言うだけありニュースにはなっていないのだが。
まさかこんな遊園地なんかに来ているだろうか、とも思った。
しかしあの厳戒さは異常すぎる。
「まぁ、気にせず遊ぼうよ。」
はアキラの手を引いて、アトラクションへ向かう。
こう言うのは大抵、気にしすぎると厄介な事になる。
例え厄介な事が起きても、絶対に関わらない。
そう心に誓い、はあたりに注意をしつつ歩いていた。
「アキラ、何に乗りたい?」
「私はどこでも・・・は?」
困った事に、今のところ特に目立って乗りたい物はない。
観覧車は出来れば最後に回したいし、いきなりジェットコースターも辛い。
あたりをぶらついていれば会いたくない人間に会いそうな気もした。
とすると、考えられるのは一つ。
「・・・お化け屋敷は?」
アキラの同意も得て、はお化け屋敷へ進んだ。
「オー!暗くて何も見えないネ!!」
オバケ屋敷では、そんな女子の甲高い声が聞こえてきた。
多分、前に進んでいる人達だろう。
パシフィックハイスクールだろうかと、は少し安心した。
今のところ、五輪と太陽学園の人間に会わなければ何とかなる。
これ以上厄介な事になる前に、はぐらかしておいた方が楽だ。
噂も、そのうちデマとして流れ出すだろう。
「アキラ、出口どっちかな・・・って、アキラ?」
アキラの声が突然途絶え、どうしたのかと声をかけるが、返事がない。
あたりは真っ暗で何も見えず、しかも自分が今どっちから来たのかすら明確ではなかった。
この状況ではぐれたとあっては見つけるのは困難。
「どうしようかな、先に出て待ってようか・・・。」
そう考え、は前へ歩き出す。
迷ったときは前に出ろ、といわれたことがある気がする。
何時の記憶だったか、ずっと昔の小さい頃だ。
そう、アキラの兄、醍醐に言われた。
その言葉を信じ、は前へ前へと歩き出す。
「わっ・・・ごめんなさい。」
「おっと・・・気をつけて下さい。」
濃い褐色肌の男にぶつかり、は体制を崩す。
だが幸いにも相手は体格が良く、しっかりと支えられ転ぶ事はなかった。
折角だ、人にあったのだし出口の方向を聞こうとは男の裾を掴もうとする。
しかし男はさっさとどこかへ消えてしまい、それは適わなかった。
「・・・出口・・・。」
本格的に迷った、本当に迷った。
人がいたと言う事は道は会っていたのだろう。
だが暗すぎて何一つ見えず、方向も曖昧。
「仕方ない、前へ前へ・・・。」
その言葉だけを頼りに、は歩き出す。
暫く歩きつづけ、ようやくドアらしき物に遭遇した。
出口か、とは喜びドアをゆっくり開ける。
だが、おかしい。出口にしては中が暗すぎる。
間違えたかとは肩を落とし、そこから出ようとした。
「・・・!」
何処からともなく、叫び声がする。
それは幼い少年の者で、比較的すぐ近くだ。
近くに人がいる、と感じたはその声の方向に向かっていった。
オバケ役の人が少年を脅かしているのだろう。
人にあったら出口を聞こうと考え、急いで走って行く。
アキラとはぐれたままなのは、やはり嫌だ。
どうせなら二人で、色んなアトラクションを楽しもうと思っていたのに。
「・・・なッ!」
だが、その思いも、出口への道筋も全てが遠のいた。
向かった先にいたのは、オバケ役と少年ではない。
遊園地に良くある着ぐるみの人達が数人。
そこまでは普通だった、何処にでもある光景だった。
だが、その着ぐるみの手には黒く光りを放つ拳銃が握られていた。
それに追いかけられ、此方へ向かってきている少年が。
《助けて!!》
英語で言われ、の方に駆け寄る少年を見る。
その後ろには男達が迫っていて、銃を構えていた。
は軽く頭痛を覚えつつも少年を抱き上げ、今来た道を急いで駆け戻った。
外に出て、安全な場所までの辛抱だ。
***
「ボーマン!ヘンタイね!!皇太子がユクエフメーよ!!」
「行方不明で大変なんですね・・・。」
聞きようによってはボーマンが変態と言われている様に思える。
ボーマンはすぐにそれを訂正し、あたりを見渡した。
日本の警察と、護衛であっただろう男達が厳しい面持ちをしている。
遠足は中止となり、皇太子が五体満足で帰ってきたら帰してもらえるらしい。
「しかし・・・まさか日本に来ていた理由がヒットマンから逃れるためだとは。」
某国皇太子は、つい最近戴冠式を終えたばかりの少年だった。
まだ10歳にもみたたない少年は、早くに亡くなってしまった親の後を継いだのだ。
だがそれを良くは思わない奴等など山ほど居る。
少年が亡くなれば、自分が国を乗っ取れるという考えの人間が。
だからこそ皇太子は日本へ逃げてきた。
「全く・・・折角の遠足が台無しだ。」
ロイが髪をかきあげながら、ため息交じりで言う。
皇太子の行方は未だ掴めておらず、掴めるまでは動けない。
もし生徒の中に不審な人物がいたら大変な事になる。
教師達も厳しい面持ちで生徒を監視していた。
「・・・亜諏羅君。」
「あ・・・恭介さん。」
生徒達は暇を持て余し、処々でそれぞれ好き勝手に動ける範囲で動いている。
警察などに注意されない程度には動いて良い、といわれているのだ。
恭介もその言い付けを護り、何も言われない程度に動いていた。
「が見つからないと言うのは本当かい?」
「あぁ・・・そうみたいですね。」
しかし、そうもいかないような気がする。
が見つからない、つまりはが疑われている可能性がある。
他の生徒は、他校含め全ての人が集まっていた。
だが、ただ一人だけが見つからない。
それも、何処を探してもだ。
「アトラクションは全て止まっていますし、
勿論探せる範囲では警察も捜していました。
一般の人達も皆一つの場所に固まってます。」
だけが見つからない。
動機もなにもないのだが、ただ見つからないだけで疑われている。
それだけ自体は深刻なのだろう、それは皇太子が狙われているのだから当然とも言える
と言う人間を知っている恭介に取ってみれば、余りに馬鹿らしい事なのだが。
「・・・せめて処々から抜け出せれば・・・。」
この様子では、それはかなり難しそうだ。
が見つかれば、当然何も言う事はない。
一体、彼女は何をしていると言うのだろう。
「オーッ!!ワンダフルッ!!」
突然聞こえてきたその声に、全ての人間が振り向く。
勿論恭介と太一も、それに合わせて振り向いた。
「・・・・・・あ。」
そこにはジェットコースターのレールの上を走ると、
その腕の中には皇太子と思われる少年が収まっていて。
後ろに追いかけるのは、黒服の男達。
「・・・・・・・・・・・・・。」
恭介は一瞬唖然として、それを眺めていた。
警察や護衛達も驚きを隠せない。
「・・・あれ・・・は・・・。」
そしてもう一人。
それを、驚いた表情で眺める男が居た。
続く。